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対岸の彼女

日本語 小説 角田光代
角田光代より (2007年)>

角田光代より (2007年) #

インパクトが強かった。僕は女性ではなくて、30代ではないのに、読みながら奇妙な懐かしさを感じた。

主人公の葵《あおい》と小夜子《さよこ》の内心の気持ちと独り言で、「僕も同じような考えもあったの」って感じ。

こういうの、角田光代さんの特技である。
主人公の人間性と内心が現れれば、現れるほど読者は同情を持つ。読みながら、主人公たちとだんだん仲良くなっていて、自分だけに、ある親友は自分の過去のことを打ち明けるような気になる。だからこの小説は、密接な経験。

この小説をみんなにお勧めする。

まだ考えている部分を見せたい。言うまでもなく、これから小説の内容はばれちゃう。

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「バイバーイ」

「またあしたねー」あかりが叫ぶ。

「うん、あしたねー」レンくんは怒ったように言い、園庭へ戻っていった。

 バイバイという言葉が、かわらない明日と同義だったころを小夜子は思う。明日また、同じ制服を着た彼女に会える。同じ目線で、同じ言葉で、同じ世界のなかで話すことができる。そう信じていたころ。

「あしたねー」

娘のあかりを幼稚園に迎えに行ったときに、小夜子の反省は感動的だった。簡単な観念だけど、口に出しにくい。感動したのは、自分のことの中の一部を認めるようになったことだ。

毎日変わらないものが心地よいこと。恋人がほしいのは、毎日同じ人と眠って目覚めるから。定期的に会える人と仲良くなりたい。日々の生活を予測できるようになりたい。毎日◯時間勉強したい。

そういうのは、僕にとっては望ましい理想的な生活。